バリ島.吉川孝昭のギャラリー内


第1作 男はつらいよ

1969年8月封切り




 『男はつらいよ』は、1969年8月27日に記念すべきあの第1作が産声をあげた。
 フジテレビ系の同名テレビドラマ(26回)で人気をはくしたことがきっかけになたのだ。
 テレビ版では最終回で寅次郎が奄美大島でハブに噛まれて死んだことになってしまい、その直後から視聴者からの復活の
 要望が相次いだことから、山田監督が映画を作って寅次郎を復活させようとしたらしい。松竹経営側の反対を押し切って
 作ったこの「映画版男はつらいよ」は、しばらくのお蔵入りのあと1969年8月に封切られた。
 そして、この第1作が大いに当たったのである。そして思いもよらないシリーズ化への道を猛烈なスピードで進んでいく。

 この第1作の物語、構成、登場人物の関係が、このあとの作品全てに反映され、生かされていく。
 この後の全ての作品はこの記念すべき第1作のバリエーションだといっても過言ではないほど、
 この第1作は完成度が高い。私のベストの中でも間違いなく上位に入る名作だ。映画3本分くらいの内容が
 凝縮されている。
 

 第1作のオープニングの曲はあのおなじみの曲とは違い、とても優しい美しい曲だ。 最初の松竹の富士山マークの時からすでに
 曲が始まり本編へそのまま流れていく。
 まず出てくるのは江戸川の桜、土手、帝釈天参道…。全て白黒映像。「寅次郎の心の風景」というべき演出だ。スクリーン全体
 を涼しげな風が吹いている。人々の表情が実にみんな美しい。
 タイトルが出るまでのシーンの中では48作中私が最も好きな演出である。この記念すべき第1作にふさわしい爽やかな映像だ。
 この短い時間の中でキャストとスタッフを全て紹介してしまう方法を使っている。これもこの第1作だけの特徴だ。


 そして同時に流れる寅次郎のナレーション…   



 「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が今年も咲いております。思い起こせば20年前つまらねえことで
 おやじと大喧嘩、頭を血の出るほどぶん殴られてそのままプイっと家(うち)をおん出て、もう一生帰らねえ覚
 悟でおりましたものの、花の咲く頃になると決まって思い出すのは、故郷のこと、ガキの時分ハナタレ仲間を
 相手に暴れ回った水元公園や江戸川の土手や帝釈様の境内のことでございました。
 風の便りにふた親も秀才の兄貴も死んじまって、今、たった一人の妹だけが生きてることは知っておりました
 が、どうしても帰る気になれず、今日の今日までこうしてこうしてごぶさたに打ち過ぎてしまいました。
 今、江戸川の土手に立って生まれ故郷を眺めておりますと、何やらこの胸の奥がぽっぽと火照ってくるような
 気がいたします。そうです。私の生まれ故郷と申しますのは葛飾の柴又でございます。」


 このあとメインタイトル「男はつらいよ」背景はなく真っ青な色。単純だがそれゆえインパクトは相当強い。
「男」は赤色、「つらいよ」は黄色
 

 「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかり姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの
 寅と発します。」
 この仁義の名文句はその後第32作以外繰り返し使われることになる。
 第32作→「大道三間 軒下三寸 借り受けましての渡世わたくし、野中の一本杉でございます」

 土手に寅次郎が座り江戸川の対岸を見ている。なんとワイシャツにネクタイ、靴という極めて珍しい服装である。帽子はいつもの
 ものを被っている。背広もこのオープニングは柄や色が若干違うまだ寅次郎の服装が定着しきっていない過渡期であること
 が観てとれる。というか、この時点ではこれ1本で終ろうとしているのでこれでもいいわけだ。

 そのあと「矢切の渡し」を渡るところをみると、千葉の方から柴又のほうへ渡っているようである。(大人30人。小人20円)
 2003年現在渡るだけなら100円程度。ぐるりと遠くを回ると500円以上するそうだ。

 矢切の地名の由来は、平和に暮らしていたこの辺りの人々が度重なる戦争の苦しみを味わい、戦いで使われた
 弓矢を呪い
「矢切り」「矢切れ」「矢喰い」を悲願して矢切の地名となった。


 そのままとらやへ直行したければ京成電鉄で「柴又駅」で降りれば早い筈であるが、あえて江戸川を渡ることによってこの二十年ぶりの
 寅次郎の柴又への帰還を感動的なものにしている。この方法はその後もしばしば採用されることになる。もちろん旅に出るときは逆に急ぐ
 ように「柴又駅」の方へ行くことが圧倒的に多いのだが。その際「第6作純情篇」に代表されるようなプラットホームでのさくらとの別れの名場面が
 数多く生まれることにもなっていくが、それは作品ごとに追々書いていく。

 川を渡りきった寅次郎がゴルフの邪魔をしたりして、すでにこの作品がコメディであることを直印象付けている。このパータンはその後もいろ
 いろ手を変え品を変えていろいろな江戸川土手でのミニコントが繰り広げられるのである。靴がアップになる。
(なんと、雪駄でなく白黒の靴!)


 ところでバックに流れる歌は作詞家星野哲郎さんと作曲家山本直純さんの名曲「男はつらいよ」であるが、第1作の出だし
 でははまださくらが結婚していないので、「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ、分かっちゃいるんだ妹よ、いつかおまえが
 気に入るような偉い兄貴になりたくて…」
となっている。これ以降はすでにさくらは結婚してしまっているので「どーせおいら
 はヤクザな兄貴、分かっちゃいるんだ妹よ…」となっていく。
例外は第3作で第1作の歌詞を使用



  ちなみに第2作は
  ♪どぶに落ちても根のある奴は いつかは蓮の花と咲く
  意地は張っても心の中じゃ 泣いているんだ兄さんは
  目方で男が売れるなら こんな苦労も
  こんな苦労も掛けまいに 掛けまいに♪

  ↑これは第2章節としても、第9作から第47作まで採用される
 

   第4作は
   ♪どおせおいらは底抜けバケツ わかあっちゃいるんだ妹よ
   入れたつもりがスポンのポンで 何もせぬよりまだ悪い
   それでも男の夢だけは 何で忘れて
   何で忘れているものか いるものか♪


   第5作から48作までは
  ♪どおせおいらはヤクザな兄貴 わかっちゃいるんだ妹よ
  いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
  奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
  今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる


  第18作、第19作だけ
 ♪あても無いのにあるよな素振り それじゃあ行くぜと風の中
  止めに来るかとあと振り返りゃ 誰も来ないで汽車が来る
  男の人生一人旅 泣くな嘆くな
  泣くな嘆くな影法師 影法師♪



山本直純さんは、このシリーズのほとんどの曲を担当し、
『リリーのテーマ』『歌子のテーマ』『千代のテーマ」をはじめとして
数々の名曲を紡ぎだしていった。
彼の名曲がこの作品群に
何ともいえない品格を与えていることは間違いない。



 歌のあとすぐ帝釈天の庚申の日にちなんだ祭りが映る。帝釈天経栄山題経寺きょうえいざんだいきょうじ)は、開創は今から三百年程前、
 寛永年間であって、ここには昔から日蓮聖人の親刻になる
帝釈天の板本尊があると伝えられていたが、一時所在不明となっていた。しかし今
 から二百年前の本堂修理の際、板本尊が発見された。安永八年の春、
庚申の日であったという。この本尊、庚申の日に出現したというので
 「庚申」を縁日と定めた。当時の代の日敬上人は自らこの板本尊を背に負い、飢饉、疫病になった江戸の人達に拝ませて、不思議なご利益を
 さずけたという。とまあ、そういういわれのあるありがたいお寺さんだ。その上寅さん人気も手伝って四季を通じて参拝者が絶えない。
 現在においても「庚申待」の民間信仰と結びついて、宵庚申の参詣が盛んになり茶屋の草だんご等は今に至っている。 とらやもこのような背
 景の中で参道に店を出している、ということだ。


山田組と親しく、ロケ時の本拠地にもなっている「高木屋」がしょっぱなから映る。このあとどの作品でも高木屋はスクリーンに登場する。
 (この当時「とらや」と大きく看板の出している店はまだない。後に本当に大きく看板を出し始めて問題となるのだがその
 こと『柴又屋騒動』はまた後日…)



 で、この映画は庚申の日の縁日からはじまる。まといを回す若い衆からまといを取り上げ寅もまといを上手に回す。
さあ!じいちゃんもばあちゃんも調子合わせて叩いてくれよー!!
ここは柴又題経寺とくりゃい!
 ちょい、ちょい、ちょいやさっさ、
ちょいやさっさ!とくりゃ!

ちょい、ちょい、ちょいや
さっさ、
ちょいやさっさ!と威勢がいい。

 まといを指先でバランスを取ったりしてなかなかのものである。
 近所の人々は「誰だい?」って言う感じで寅次郎のことを覚えていない…。
 この近所の人役で谷よしのさんはやくも登場! 
八百万(近所の八百屋さん)のおかみさんもいっしょに出ていた。

谷よしの初ゼリフ。寅のことを土地の者かしら?




                             



アクロバテックな芸で近所の人々を魅了している。

御前様初登場!「ほー、なかなか見事な…
御前様を見て、寅駆け寄り、「御前様!御前様でしょ!おひさしゅうござんす。あっしですよ!
寅ですよ!
車平造の倅寅でござんす!ほれ、あのー、庭先に入り込んじゃ
トンボ取して午前様に怒鳴られた不良の寅でござんす。

御前様「あー、覚えとる覚えとる」
寅「ほんとですか覚えてますかありがとうございます」


後にいろいろな場面で寅と深い縁を持っていく御前様も
この時は「あー、覚えとる」程度の縁だったんだなー。


 
 源吉(源ちゃん車つね(おばちゃん)もここで寅次郎と会って
 「寅ちゃん!寅ちゃんじゃないかい!」
「よー!おばちゃん、生きてたかい!、おじちゃんはどうしたおじちゃんは?」
「活きてるよ1ぴんぴんしてるよ!」とおばちゃん泣く。


 おばちゃんはこのとき「寅ちゃん」と叫んでいる。
おばちゃんはこのあと第8作あたりまで
「寅ちゃん」と呼んだり「寅さん」と呼んだり、呼び方が安定しない。
10作目を過ぎたあたりからは「寅ちゃん」に絞られた。

 そういえば博でさえ、初期のころには時々
「兄さん」と呼ばずに
「寅さん」と呼んでいる
シーンが1箇所あった。
 


 源ちゃんはいきなりころばされてかわいそう…。
このあたりの源ちゃんはまだ
東京弁を使っていてあの独特の
大阪弁まるだしのキャラはない。
 職業も寺に雇われているのか、とらやに雇われているのかはっきりしない状態が
続く。寅と一緒に京都あたりまで長旅をしたりもする。
 第5作「望郷篇」あたりからは、かなり
地の大阪弁も出てきて、キャラが立ってくる

 この第1作では寅次郎ともそんなに仲は良くない。


 松竹最後の大部屋女優と言われ、
演技のうまさでは定評のある谷よしのさんも、
この場面で近所のおばさん役で出演。このあと男はつらいよの
ほとんどの作品で旅館の仲居さん役や
花売り、近所のおばさん役
などで出てきてはセリフを少しもらっていた。
第9作ではちょっとした長ゼリフもこなした。



このあたりの場面、本来、20年ぶりの寅の帰郷なので、もっと含みを
持たせて、じっくり盛り上げたいところではあろうが、話はいきなり
とらやへ飛ぶ。



 
このあと夜のとらやで車竜造(おいちゃん)、車つね(おばちゃん)に仁義を切る寅次郎。
森川信さんは第8作まで出演

 
森川信さんのあとは、

 松村達雄さん・・・第9作〜第13作 ←キップのいいおいちゃん。

 下條正巳さん(下條アトムのお父さん)・・第14作〜第48作

↑中庸なおいちゃん


 森川さんと渥美さんのドタバタや掛け合いが絶妙だった。私はご両人とも天才だと思っている



とらやの茶の間


 寅「おいちゃん、おばちゃん、ただいま帰ってまいりました。
 さ、お手を上げなすって。それじゃ、挨拶になりません。
 十年一昔の勘定でいきゃあちょうど二昔。
 父母もさぞかしご迷惑をお掛けしたことでございましょう。


 おいちゃん、おばちゃん恐縮している。近所の人たちもぞろぞろ店の中まで
入ってきて見ている。
←いい時代だったんだなあ…(^^)
 

弟(てい)の身持ちまして、いちいち高声(こうせい)に発します
 あいさつ失礼さんです。ここに改めて厚く今までの
 ご無沙汰のお詫びとお礼を申し申し上げる次第でございます。 
 なお、たったひとり残りました愚かなる妹が無事に成長
 しましたのも、ただただひとえに、
 お二人の御訓育の賜物と誠に兄としては
 お礼の言葉もございません。
 おいちゃん、ならびに、おばちゃん。本当にありがとうございました。


 と続いていく。見物に来ていた近所の人たちに対しても、


 これはご近所の御一統様、長らくごぶさたいたしました。以後お見知り置かれまして、
 よろしく引き立っておたの申します。
と続いていく。

 まあ、この頃の寅次郎はとにかく『仁義を切る』のが好き。
 まだしっかり若かったんだねー!!


 このときとらやにはみつ編をした若い女の子が店員として働いている。ほとんどセリフは貰っていない。
 この女店員さんは第2作から役者さんが変わり、その後も第5作あたりまで出ていた。

 
 寅「ところで、
ナニはまだかい?」
 と、みんなで、さくらの勤め先(
オリエンタル電気のキーパンチャー)の話題を始める。
 寅「近所の紡績工場の女工でもやってんのか?」


寅は女の人が働いていると言えばすぐ「紡績工場の女工」と思う癖がある。
第11作「忘れな草」でも夜汽車の窓から
見える明かりの話で寅はやっぱり「紡績工場」出していた。

 寅、分かんなくて
「キーパン?」
 おいちゃん曰く「
電子計算機係」だそうだ。
 寅「
電子やってんの。そりゃたいしたもんだよ!今の世はなんたって電子だからねえ」
 ってよく分からないこと言っている。(^^;)

 そこからいきなり「土産だ」と言って自分のお得意芸であるバイのことに振り、「電子応用のヘルスバンド」
 おいちゃんやおばちゃんに土産がわりにあげるためにトランクを開ける。
紫の腹巻や黒の靴下
きちんとたたまれて!入っているのがわかる。
寅次郎はこうみえても整理整頓が上手なところもあるのだ。全作を通して寅次郎はずぼらだが清潔好きな感じではあった。
 結構きちんとしているのだ。
 それにしてもこのトランクちょっと小さめ!


 
 「電子の力でもってね、体中の毒素と言う毒素が全部追い出されて新陳代謝がすーっとよくなちゃうんだ。」
 おいちゃん「これだろ?」←そんなわけないよ、おいちゃん。(^^;)
 寅「断っとくけど、これはただしガセネタじゃないよ。論より証拠にはめてみりゃわかる!電子のつぶつぶみたいなものが、
 手首の血管からすーっと体内に入って五臓六腑とかけめぐるんだ。つまり血行をよくするんだよ! おばちゃん、どうだい?なんだか、
 体が楽〜になっただろ?」
 おばちゃん「うん、うん、」と妙に納得!!!!?←ほんとかよ…
 
 さすがバイで慣れてるだけあって専門用語がバンバン出てくる。
 「新陳代謝、五臓六腑、高血圧、神経痛、俗に言う「血の道」だ。」
 これはご婦人病…と言っているうちに寅次郎が「ナニはまだかい?」と待ちに待っていた車櫻(さくら)が帰ってくる。
 まだ結婚していないので車姓である。第2作以降は当たり前だが諏訪櫻である。
 だからこのときはまだ当然戸籍は 車櫻(くるま さくら)である。
漢字で書くとかたいので普段はひらがな( 車 さくら )
を使っていることがこの後のお見合いの席での会話で判明!

さくら!…へー、おまえ、ほんとにさくらかい?
ほらほらほら俺だよ、この顔に見覚えねえのかい?」
さくら「あの…」
「さくら!
さくら「ねえ、この人誰なの?」って言って分からない。
寅「いいんだ、いいんだ、無理はねえ。
五つや六つのちっちゃいガキの頃にほっぽりだして
それっきりだ、フッ、親はなくても子は育つっていうが、
でかくなりやがった


別に寅がさくらを育ててたわけじゃないんだが(^^;)

さくら
「あ…!」
寅、さっとさくらの方を振り返る!

さくら「お兄…ちゃん?
寅「そーよ!お兄ちゃんよ!
さくら生きてたの…
喜ぶさくら
さくらお兄ちゃん!!

 一同しんみり

寅 「苦労かけたなぁ…。ご苦労さん…」

 と二十年ぶりの再会を喜ぶ。
 とにかく倍賞さん若い!!そして綺麗!!


                         


この第1作の倍賞さんと第48作の倍賞さんを見比べると「歳月」というものを実感できて、しみじみしてしまう。

 その直後しょんべんしてくらあ…でタイミング外す。やっぱりコメディだ!抜け目のない演出。
 山田監督は絶対感動的な場面のあとにオチをもってくるのだ。
 これぞ喜劇の醍醐味。(^^;)

 裏庭で立ちしょんしながら「人生の並木道」を歌う。『♪なあくなあ〜いもとよお、いもとおよおなくなあ〜…中略…とくらぁ』 ゴーンと寺の鐘

 
( ↓これ以降寅次郎のことを短く「寅」と書きます。ご了承ください。


 この歌を歌っている間にさくらは2階の自分の部屋に上がり自分たちがまだ小さい頃の父母兄弟で撮った額に入った
白黒記念写真を見る。←出た〜!!


             


            




異母兄弟の寅だけ爪弾きっぽく横目で睨んでちょっと舌を出している。
マニア必見これが最初で最後の
少年期のさくらや寅の姿だ。


 
父親の横で賢そうに写っているのがその後まもなく
亡くなってしまった
長男の顔
もちろんさくらのお母さんも写っている。
↑後にも先にもみんなこのときだけの登場。

 この父親は女道楽が凄くて親戚一同を困らせてたそうだ。
寅も酒飲んだときに芸者「きく」に生ませた子である。きくはまだ赤ちゃんだった
寅をとらやに置いて行方をくらましてしまう。寅の生い立ちには哀しい物語がある。
このことは第2作でしっかり
出てくる。

 さくらが2階に上がっている間、ちょっと向こうの窓から諏訪博が見える博初登場の場面である。


 そしてなんとこの第1作は朝日印刷でなく、なんと共栄印刷KKになっている。(工場の壁に描かれた大きな文字)
 この朝日印刷はその後も株式会社」になったり「有限会社になったりいろいろ揺れ動く。
 工場の創業は「拝啓車寅次郎様」のタコ社長の話によると昭和21年夫婦で始めたらしい

 序盤はここまで。


 このあとさくらのお見合いからはじまって博との
結婚まで、と御前様の娘の冬子とのからみの2本立ての
本題に入っていく。
なにしろこの第1作は中身がぎっしり詰まっているのだ。
息つく暇もない!


 まずはさくらの見合い。
 オリエンタル会社の取引会社の社長がさくらを気に入り、見合いの話が進んだようである。←ある意味凄い玉の輿
 ところがおいちゃんの二日酔いのお陰で寅がホテルでのお見合いに付き添い凄いことになる。
 さくらの結婚式もおいちゃん出席してないので
本番に弱いタイプかもしれない(^^;)


寅「さくら、じゃあなにかい、お見合いってのはフウケン主義だって、いうのかい?」
さくら「え???
おいちゃん「実を言うとなホテルなんだよ。」←ホテルにビビルおいちゃん。
おいちゃんとおばちゃんに頼まれてさくらの見合いのためにホテルに行くことになる寅。
忙しいたって、まあ、歯磨いてるだけなんだけどね…」ということで、付き添いを引き受けた寅はさくらと一緒に
ホテル(ホテルニューオータニに向かう。←そういえばこのホテル後に「人間の証明」に使われたなあ…

寅、タクシーの中で「さくらよ、ホテルなんて英語にいちいち驚いちゃいけねえよ、当節はな、ちょいとした連れ込み旅館だって
生意気にホテルだ。ホテルなんかに脅かされてたまるもんかい」
さくら「それ、それがホテルよ」
 

見合いの席でスープを音を立てて皿を持ちながらすする寅。 
見合い相手の家族、皆露骨にいやがっている。

 寅も無作法だが、いやがる人々も鼻持ちならない、という感じの演出。
 仕事を聞かれて、
 「セールス、ですね…。主に…本ですね…法律とか統計とかとか、その他、英語、催眠術、夢判断、
灸点方、諸病看護方、
染み抜き方、心中物、事件物、と、
まあいろいろなんでもやってますが…」

ビールを飲み干して、ふっと息を吹き、「どうぞ、お近づきのしるしに」と、グラスを差し出す。

                        



まあこうなると先は見えてくる。

部長「毎年3月になるたびに、人事異動の時期が近づくと各課の間でこの「さくらさん」の争奪戦がはじまります。
それをね、人事部では「ストーブリーグ」と申しましてね。ハハハ!
さくらの花が咲く頃にその辞令がおりるわけです。
一同「ハハハハ!!」
寅、必死で、肉を切っているが、
見合いの相手(広川太一郎)レタスを飛ばし、おでこに当ててしまう。
これは渥美さん何度もやり直ししたんだろうなあ凄い命中率!だ。

見合い相手の家族「しかし、珍しいお名前ですな「さくら」さん、というのは…お父さんのご趣味ですか
さくら「は、はい。でも、戸籍では漢字なんです」
部長「あ、そうそう、漢字だったね」
家族「桜の花のさくら…」
さくら「はい」
寅「ええ、車櫻なんて書きますとね、誰も名前なんて思わないんですよ。
ほう、くるま桜なんてのがあるのかい?』なんてね」
部長「なるほど、ハハハハ」
寅「へへ…、いやこの「さくら」って字がね面白ございましてね。えー、
へんに貝2つでしょ、それにですから、

2階の女が気(木)にかかる」とこう読めるんですよ!
一同「こりゃ面白い、ハハハハ!」
寅「面白いでしょ!しかし漢字と言うのは面白ろうございますね。えー、」

尸(しかばね)に水と書いて尿!つまりしょんべんだ。
尸(しかばね)に米と書いて
(ふん)!つまりくそですね。
尸(しかばね)にヒを2つ書いてつまり、
なんですよね。
どうしてへがヒか?つまりおならは「ピー!」ってしゃれかなっと思って…へへへ

↑山田監督とことんまで言わせます。いやーキツイです(^^;)

ちなみに渥美さんは第1作、第2作あたりではでいろんなアドリブを試みたようだ。
しかし山田監督は渥美さんがあまりにもアドリブを連発するので心底困ったらしい。
しかしその後、渥美さんも、自分の出た映画を観て山田監督の感覚を理解し、
無駄な動きが少なくなり、第5作あたりからは息もぴったりな関係になったようだ。

さくら、止める。
「さくら、ビール飲むか、」
さくら、怒って「結構よ」
寅「そうか、結構ね、「結構毛だらけ猫灰だらけ」ときやがった…、
見合い相手の妹には受けて彼女は吹いて笑っている
ははは、笑ってる、笑ってるよ!お嬢さん面白いこれまだ続くんだよ!
「尻の周りは糞だらけってね!」こりゃちょっときたなかったか!
一同シーン…。寅を睨んでいる。
寅、気まずくなって、ビール飲み干し「おう、酒!」とおかわりの催促。

このあと寅の出生の悲しみに寅自らが触れ、憤る場面は物悲しい。

寅、そうとう酔っ払って、
寅「ねえ、不思議でしょ?こんな美人の妹に、ぶっ壊れたツラの兄貴がいるってことは不思議でしょ?」
見合い相手「いえ、…そんなことは」
寅「いやー、それもそのはずよ、
これとオレとではね「種違いなんだよ」いやー違う!ハハ、「腹違いなんだよ
一同唖然…。最悪のムード
さくら「お兄ちゃん…」と止める。
寅「うるせえな」
部長「そういう話は、また別の機会にね」
寅「いや、そんなことないよ、こういうことははっきりさせとかなきゃさくら可哀想だからよ」
寅「あたしの親父ってのはね、大変な女道楽
私のお袋ってのは芸者なんですよ、
えー、その親父が言うにはね
親父がへべれけの時私を作ったんだとさ…


給仕がメインディシュを下げようとすると
寅「食うんだよ!」と払いのける。


親父はね、あたしのことをぶん殴る時いつも言ってたね。
『おまえはへべれけの時つくった子供だから生まれつき
バカだ』とよ!あんちゃん悔しかったなあ!…酔っ払って
つくったんだもんなぁ…俺のこと…。
真面目にやってもらいたかったよオレは!本当に!


これは寅の心の傷であり、癒されることのない寂しい生い立ちなのである。
第2作、第7作でもこのことが大きく浮き彫りになっていく。


見合い相手の母親、我慢できなくて立ち上がり帰ろうとする。
「あ、かあちゃんどちらへ、あ!お便所!
あー、いってらっしゃいいってらっしゃい。
出物腫れ物ところ嫌わず。ってね。
我慢しちゃいけねえや。爆発しちゃうからな!」
寅、立ち上がって「あ!そうだそうだ!
オレも行こ、オレも行こ。大丈夫だ
心配すんなすぐ帰ってくるから!」


最後の駄目押しは

あっ!みなさん私は早いんだよ!
早飯早糞芸のうちってね!
見せたいくらいだね!
座ったなっと思ったらぺロっと
ケツ拭いちゃうの!


これでお見合いはぶち壊し。
しかしまあ、そのおかげで博とさくらはその後結婚し、
満男が誕生するのだからこれでよかったとも言える。
所詮、住む世界も、価値観も違う相手とはそうは長続きしなかったと思う。


その夜、酔っ払って帰ってきた寅と、さくらの「ダメなんじゃないの…」という涙声に、
寅を行かせたことを後悔するおいちゃんたち。

さくらは自分の部屋に戻って泣いてしまう。


ここでも
「人生の並木道」を歌いながらタコ社長の工場へむかって立小便
タコ社長「誰だー!俺んちの塀にションベンひっかけるやつは!!
タコ社長まずはちょっとだけの出演
寅「なんだい!この親父!チキショウ!てめえとここそなんでえ!
朝から晩までガタガタガタガタうるせえ音させやがってよ!えー!
オレんちにはな、まだ嫁入り前の娘がいるんだ!
知らねえのかよ!朝から晩まで仕事してりゃいいってもんじゃないよおまえ!
お天道さんが沈んだらねー早めに寝てもらいてえな、貧しいねえー!君らは」

悲しんでいるさくらを向かいの工場の寮の部屋から博が見ている。


翌日その筋のおあ兄さん達にバイを始めるに当たっての仁義を切る寅(寅ってほんと仁義切るの好きだ)

わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。
姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。
皆様ともどもネオン、ジャンク高鳴る大東京に
仮の住居まかりあります。不思議な縁持ちましてたったひとりの
妹のために粉骨砕身、売に励もうと思っております。
西に行きましても東に行きましても、とかく土地土地の
おあにいさん、おあねえさんに御厄介かけがちなる
若造でござんす、以後見苦しき面体お見知りおかれまして、
恐惶万端引き立って、よろしくお頼み申します。




                           




このあと売をしている舎弟のと再会する。
この登も最初の作品群では第10作くらいまでちょくちょく顔を見せていたが、そのうちに源ちゃんの
キャラが目立ってくるに従い役がかぶるので登場しなくなる。
第33作で久しぶりに登場。その時はすっかり堅気になって言葉も変わってしまって今川焼屋をしていた。
ちょっと昔の覇気がなかったのが残念。)



このときの
口上
「さあ、捨てちゃうぞ!持ってきやがれ!どうだこの乞食!やけだぞちきしょう!」
劇画本.死線を越えて
「やけのやんぱち日焼けのなすび色が黒くて食いつきたいがあたしゃ入れ歯で歯が立たないよ!ときた。
ね!かどは一流デパート赤木屋さん黒木屋さん白木やさんでべにおしろい付けたおねえちゃんから下さい、
ちょうだいでいただきますと500や600はくだらない品物ですが今日はそれだけ下さいとは言いません!
……もうこうなったら浅野内匠頭じゃないけれど腹切ったつもり!



                            


そして翌日会社でやっぱり断られるさくら。

おいちゃんとおばちゃんはカンカンである。そうとは知らず登るをつれて帰ってくる寅。

「寅さん!断られたのはあんたのせいなんだよ!」
この場面で寅は怒ってさくらに思いっきりさくらにビンタを食らわせてしまう。
このあとの作品でもしばしば寅はさくらを押し倒したり、コツいたりするが
こんなに激しくなぐったのはこの第1作だけだと思う。
強烈だった!

「お兄ちゃんなんかどっか行っちゃいなさいよ!」

この頃の山田監督の演出は、生々しくてエネルギッシュだ!


                             


これを見てだまっちゃいられないのがおいちゃん。裏の博の手も借りて寅を拳骨で殴りつける。このへんはすごいドタバタ劇だ。
後期の作品群では絶対お目にかかれない立ち回りだ。
博の初セリフ「待て!暴力はやめろ!」


                        



おいちゃんこのゲンコは俺が殴ったんじゃないぞ!
俺のゲンコじゃねえぞ!こりゃ死んだてめえの親父のゲンコだぞ!


って言うおいちゃんに対して寅も意地で返す!

「笑わせやがら!親父のゲンコはもっと痛かったィ!!」

おいちゃん「おとついてめえの面見たときはな、
ああ、親父が生きてたらどんなに喜ぶかと…、でもかえって
死んだほうがよかったィ!このざま見るくらいならな、
死んだほうがましだったと、親父は今ごろ草葉の陰で、
草葉の陰で…


このあたりはそれぞれのセリフが生き生きと躍動感に満ちていて観ていて気持ちがいい。

まちがって博が思いっきり殴られたり雑巾で顔拭いて真っ黒になったり大変な場面である。
「この雑巾で顔拭いて真っ黒」はその後の作品でも時々採用される。 
さくらのテーマ流れる)

博は本当はそうとう喧嘩が強い。そのことは第3作「フーテンの寅」で
寅にストレートパンチと背負い投げを食らわせて見事に証明された。


翌朝反省してひとり矢切りの渡しを千葉方面に渡り旅に出る
もちろん、さっさと京成柴又駅からいったほうが早いのだが、やはり雰囲気を重視する寅ならでは
の旅立ち方だ。
土手向こうからさくらと登が叫ぶが「そこが渡世人のつれえとこよ」
ということで行ってしまう。


それから1ヵ月… 寅は奈良にいる。そして病気療養していた御前様のお嬢さん(坪内冬子)とばったりお寺で会うことになる。

 後には全ての女優さんが熱望したと言われる「男はつらいよ」のマドンナ役もこの第1作はキヤのマドンナ役
 
ということでどの女優さんも尻込みしてなかなか出演を引き受けてくれなかったそうである。
光本幸子さん
(新派)は快諾してくださり、結果的にはこの作品はヒットしたので彼女にとっては大いに
プラスになったと思われる。

ただ、この冬子さん、悪気は無いし上品なのだが、寅の心をあまりにも分からない人だった。
それともうすうす分かてても、自分も寂しいのでつい甘えたのだろうか…。



奈良で御前様が冬子さんの写真を撮る時に現れる後ろ足を怪我した野良犬がいるが、あれは偶然なんだろうか?…前々から
気になっている犬だ。
外国人の夫婦連れにつき合わされている寅とばったり会う。
(このような無理やりの偶然は全48作全部のあらゆるところでおこることになる)

「民情視察ですか」?「御前様もスミにおけませんね…」「おまえが出目金とあだ名をつけてよくいじめとった冬子だ。」…。
「寅ちゃんでしょう。ちっとも変わらない同じ顔

この東大寺大仏殿の場面からなぜかピンクのビニール鹿
出てくるのだがこれも気になってしょうがない。そのごずっとあの大きな鹿を寅も冬子も捨てる気配がない。アレが気に入っていたとしか思えない。

歴史的名シーンである

御前様の記念撮影ギャグ「3連発バター」
の場面でもしっかりど真ん中に置かれていたし。あんなもの普通は小さな子供のおもちゃなんだけどなぜか
最後は
題経寺の冬子の部屋にまで持ってきてしまっていた!なぜだ?なぜそんなに気に入るのか?
たぶん当時は大人もああいうものを面白おかしく持っていたのかもしれない
ちなみに御前様のあの「バター3連発」の場面は
3回目の弱気な「バ.タ.ァァー…」
が最大の狙い!
この3回目が最高!

さくらの結婚式の場面でも寅がこの「バター」ギャグを性懲りもなく飛ばす!下の映像参照↓
その後も第9作「柴又慕情」など、あまりにもしょっちゅう出てくるおなじみギャグだ。
あの歌子ちゃんなんかも越前海岸でみんなといっしょに「バター」って言っていた。


                            


奈良で冬子たちが泊まるホテルは奈良ホテル!さすが御前様。あそこはなかなか渋い伝統の重みを感じられるホテルだ。
「いい年をして草履履きじゃ人に笑われるからな」   ←寅は普段「雪駄」という。


一方とらやでは冬子からのハガキが来て…。

おばちゃん曰く「大島紬でも売ってんじゃないのかい?ニセモノのさ。」さすがおばちゃんなかなかいいところをつく。

博現れて「団子200円下さい」さくらちょっと嬉しそうな顔して「はい」
さくら嬉しそうに♪フフッフフッフッフー♪(スイカの名産地のメロディ)
とだんごを裏に持っていく。

おいちゃん真似して♪フフッフフッフッフー♪だって…さくらの方もまんざらでも

そこへ冬子がとらやに現れる。そのあとすぐ寅も!(結局一緒について来たのである)
おいちゃん開いた口がふさがらなくてマッチの火ずーっと着けたまま…)
燃えてる燃えてる燃えてる!燃えてる!←寅が早口で4連発

寅が裏庭にいるさくらたちのところへ行ったらさくらがギター持って「スイカの名産地〜♪スイカの名産地…
と弾いているシーンは私のお気に入りだ。雰囲気があっていい。木にもたれかかっている博もなかなかだ。
みんなと楽しそうにしているシーンに出くわす。
このシーン私は大好きで静止画にして持っている。
(この歌は結婚式の披露宴でも工員たちが下手糞に歌う。第4作でも歌われる。)

                           


 「さくらさん?気安いぞこのやろう!さくらは大学出のサラリーマンと結婚させるんだい。てめえらみたいなナッパ服の職工には
 高嶺の花だい!」
 この言葉に工場の若者達は偉く傷ついてしまう。このとき映る彼らの部屋(2段ベットが3つ

 寅と冬子帝釈天までの参道を歩く。「おう!相変わらずバカか?」「しっかり稼げよ!」
 「暴力絶対反対!」「ゲタ寅のバカ」の看板←イラストがうまい工員がいるらしい
 で河原で果し合い。廃屋で口げんかする寅と博。
 博は大学出にこだわる寅に反感を抱く。
 早い話しがだオレが芋食って、おまえの尻からプーと屁がでるか?どうだ!
このギャグのバリエーションはは「ハイビスカスの花」でも出てくる。

 「あれ?このやろう、てめえさくらに惚れてやがんな?このやろう、女とか、愛だとか、ハチの頭だとかアリのキンタマだとか
 ゴタク並べやがって…」
 「兄さんはまだ早い」といいながら机からステンとひっくり返る

 「眼でものを言うのよ」って博に説教。このあと寅自身が冬ことの舟遊びのときに自ら実践するが全くの失敗。←源ちゃん隠れて見ている
 さくらの勤めるオリエンタル電機に出向いて博のことを聞いてみるがほとんど何もしゃべらさないで寅が勝手に決めつけてしまう。
 本社の窓から見える(サントリー純生の看板)今度は寅の背広がグレー結構いろいろ持ってるんだなと思う。
 「ここの便所ってのは西洋式か上げ蓋の
 
 タコの工場に戻った寅「結構結構、稼ぐに追いつく貧乏なしってね!」
 博に聞かれて寅 「パーだ。イチコロだ。」
 博
パー!? 「そうですか…」
 寅次郎さん…あんた女の人に惚れたことが…」 博凄いショック…
 

 
博、さくらのところにやってきた。思いつめた真剣な目  
 さくら「どうしたの、博さん?」

僕の部屋からさくらさんの部屋の窓が見えるんだ。
朝、目を覚まして見ているとね、
あなたがカーテンを開けてあくびをしたり、布団を片付けたり…。
日曜日なんか楽しそうに歌を歌ったり。
冬の夜、本を読みながら泣いていたり、…あの工場に来てから
3年間、毎朝あなたに会えるのが楽しみで、考えてみれば
それだけが楽しみでこの3年間を…。」
「僕は出て行きますけど、さくらさん幸せになってください。さよなら。

 
 この時の前田吟さんいいなあ。
 第8作「恋歌」の母親の葬式の時も渾身の名演技だった


                       

 

 
さくら、必死で博を追いかける!なんとかギリギリでプラットホームで待つ博に追いつく。もうすでに電車はきていた。
 (入口、出口の看板下に
アートコーヒーの宣伝)

 さくら、改札の鎖を勝手にはずしてホームに駆け上がるが改札の駅員は見てみぬふり(偉いぞ!駅員さん!)

 運命の「押上 3261番列車」ピーっと笛が鳴り
さくらは留める間も無いのでふたりで思わず電車に乗る。
さくらの優しさと果敢さ

 乗らなくてもいい電車につい思わず乗ってしまったさくらと博に理屈では割り切れない
 青春の輝きを垣間見た。この場面もいいなあ…。


 もしこの時さくらが博に追いつけなかったらさくらは一生後悔し、
 兄の寅を恨むことになったかもしれない。

 
そうなるともちろん満男も生まれなかった。さくらの足は結構速いと見た!


                   



 
一方とらやでは寅とタコ社長やおいちゃんが口喧嘩 「日当たりが良くなっていいや」「出っててくれ!」
 

 
そこへさくらが戻って来る。
 「ただいま」
「お兄ちゃん、私博さんと結婚する。
決めちゃったの。
いいでしょう、ねえ、お兄ちゃんいいでしょう。」


 「社長!博さんが帰ってきました!」「ホントか!おい!」

 
寅、少し驚いて、はっとするが、こっくり頷いて喜ぶ、でもふっと
 兄としての寂しさも感じる。

 
この時の渥美さん、倍賞さんの演技は絶品でした。
 
倍賞さんは48作中このシーンが最も
 きらきら輝いていて美しい。

 48作中でも名場面ベスト3に入るくらい好きなシーンです。

 店のほうで店員さんもその様子を見ている。
 おばちゃん泣いてしまう。おいちゃんのなんだかうれしそうなほっとした顔


                



 そしてタコ社長(桂梅太郎)を仲人に、川甚(川魚料理で有名な料亭)で結婚式を開くことになる。

 タコ社長例のごとく手形の日がどうのこうので遅れてしまい顰蹙。(社長の奥さんが少しだけだが登場!)

↑奥さん役の
水木涼子さんこの後も第6作「純情篇」や第33作「夜霧にむせぶ寅次郎」などでほんの時々顔見せ
 
たり声だけの出演だったりする。(第6作ではそうとう長めに出ていた。)

 ちなみになぜかおいちゃんは欠席。見合いのとき同様前日の酒の飲みすぎか?
普通ありえないぞ!
 
 結婚式の前に博の父親と母親が来ていることを博も含めみんな初めて知る。

 北海大学農学部名誉教授 諏訪一郎(ひょういちろう)←このという字は苦労したぜ!結婚式場でも
 神主も司会者もタコ社長も誰も読めないんだもの。(たぶん日本中で読める人はほとんどいない…)
 インド哲学研究(第8作)なんだけれどもなぜか農学部!?
 
 
タコ社長
インチキじゃねえか?」

 神主「諏訪…イチロウ」
 タコ「諏訪ゥアーイチロウ」
 司会「諏訪、諏訪ウンイチロウ」

記念撮影で例の「バター」をかます寅!

博、納得がいかなくてぐずる。

工員:「
博さんとさくらさんがけんか…あっ、間違いました!―中略―そのけんかというのは
   
『おまえらナッパ服の職工にさくらを嫁にやれるか!』
御前様:「お兄さんの寅次郎君が父親にしかられて泣いていると自分もそばにいてしくしく泣いている。
     そんなやさしい子供でした。それにひきかえ寅次郎君というと…困ったー。本当に困ったー!



歌♪『五月のある日、スイカの名産地、
結婚式をあーげーよー、スイカの名産地。
スイカの名産地、すてきなとーころよー、
きれいなあのこの晴れすがた、スイカの名産地、』♪
 アンコール!



                   



このあたりでさくら、
いつのまにかウエディングドレスにお色直ししている。

司会「諏訪、諏訪、うん一郎様…」

博の父親「…わたしどもそのような資格のない親でございます。なんという私は無力な父親であったか…
      この8年は私ども2人にとって長い長い冬でした。…」

感動した寅は服が「ビリッ」と破れるのも気にせず博の両親に礼を言うのであった。
終始咽び泣く博、さくらも泣く、出席者の冬子が拍手。みんな拍手。寅お礼を皆にする。

結婚式も無事終り、ちょっと放心状態の寅。(
水鉄砲で遊ぶ)小鳥籠。
(氷、アイスクリームの白いひものれん)(ラムネが机に置いてある)

黒サングラスして「おいちゃんよお、ちょっといってくらあ」(冬子のところへ行く)

おばちゃん
「ごくろうさん」
「おやー!?」ぶつぶつぶつ…
「ごゆっくり」
「あれ!?何だこのやろう!…」


                 


とらやに大きな
ペプシの宣伝が取り付けてある
(第9作もペプシ)普通は
雪印が多く、時々森永サッポロキリン、時々無印(スポンサー無し)もある。
団子やかき氷などの値段はまだこの第1作ではスクリーンに登場しない。残念!!

題経寺で冬子と。
「少し痩せたんじゃないの?」
「ここ1貫目ほど…」
「そういえば顔色も悪いわ…」
「 コホコホ…」
源ちゃん服を広げて二人を見つめる。

オートレース
で2000円儲けて、夜に飲み屋で焼き鳥を食べる。「猫のはらわた」

夜の帝釈天参道で冬子が北島三郎の「喧嘩辰」を歌う♪「殺したいほーどー惚れてはいーたーがー…」♪

 「口笛は幼きころのわが友よ吹きたくなれば吹きて遊びき」  

これは下の石川啄木の「一握の砂」からのアレンジ。↓

 晴れし空仰げばいつも/口笛を吹きたくなりて/吹きてあそびき

「さよなら」      源ちゃんヘルメット夜回り

 
寅、参道を踊りながら歌う♪「殺したいほーどー惚れてはいたーがー、指も触れずーに―、
               別れたぜ、浪花節だと笑っておくれ、
               野暮な情けに生きるより俺は仁義に生きて―ゆーくー。♪
この夜の寅は至福だった...
これもシリーズ屈指の名シーンだ。


                    



釣竿を持って題経寺に向かう。源ちゃんに水をかけられ、「気をつけろ!うすのろ!」
「うすのろ、うすのろ、うすのろよ!」
ピンクの麦藁帽子第5作でさくらがかぶっていた!
「今日、お約束してたんだったわね。ごめんなさいね」←
冬子ちょっと鈍感だぞ!


御前様「これから親戚になる男だ」
第5作でもせっちゃんのお母さんが寅にとっては厳しいこのセリフを言っていた。

「お笑いくださいまし。私は死ぬほどお嬢さんに惚れていたのでございます。」
第1作らしく寅の気持ちがストレート

                

ちなみにこの鈍感な冬子お嬢さんは第7作「奮闘篇」と、笠智衆さんが亡くなられてすぐの
第46作「寅次郎の縁談」で笠智衆に敬意を表する意味で再登場する。


さくらたち新婚旅行から帰ってタコ社長たちにお土産を渡している。
この場面、店員さんの女の子思いっきりスクリーンに映っている。↓


                        

おいちゃん冬子の婚約者を見てきて「ああ嫌だ、ああ嫌だ」

「かしらなんてもんじゃないよ」
タコ社長「江戸川で身投げするんじゃねえだろうな

とらやの人々
容赦なく寅の話で盛り上がる。

おばちゃんここでいいこと言う
「お嬢さんもはっきり言ってくださりゃいいのに。
わたしゃね、お嬢さんにも罪があると思うよ。」



  
このあとおいちゃんの
歴史的名言
「まくら、さくら持ってきてくれ...」が入る。
これは実は森川さんのアドリブだった。
この先くどいほどこのギャグは使われる。

  
ガラッと押入れを開けると寅がいる。
 
「あ、あの、いたの?」
 「まあね」
 「どうしたの、こんなところで?」
 「知らねえよ」「聞いたよ」
 「あ痛っ」「笑うなよおめえ」

 
 
  
そして口笛を無理やりふく寅


                        


  
 そそくさトランク片付けて出て行く寅。
   さくら「嘘だわ!本当は怒ってるんだわ...」

   
「お兄ちゃん!行くとこなんかないんじゃない!ばかね!お兄ちゃん!」

    
登追いかけていく

                         


   
上野駅の食堂で登に八戸へ帰るように叱って殴る寅(このシーンは迫力があった!)



     
このあと寅は登の食べ残しのラーメンを号泣しながらムチャ食いする。
   
  ↑このラーメンは山田組小道具「消えもの」担当の露木さんが作っている。
      露木さんは
備後屋さん役でもしょっちゅう登場!
 
      
寅がこんなに泣くシーンは珍しい。第2作も寅は泣きますよー!!


                          


  
           1年後 

 
さくらに「満男」が生まれみんなで「寅に似ている」と言い合う。

   
・中村はやと・・・(第1作〜8作、10作〜26作)
  ・沖田康浩・・・(第9作)
  ・吉岡秀隆・・・(第27作〜48作)


 ↑もちろん吉岡君が有名だし演技も上手いが素人の中村君も
天然ぼけの魅力があり根強い人気がある。
  沖田君も自然な感じでなかなかよかった。
  
ちなみに、中村君と吉岡君の年齢が同じでなかったせいか、
 満男は結局小学校を8年か9年行くことになる。(^^;)

 
満男も時としてさざえさん的時空に飛ぶのだ。


 
寅から冬子への手紙が題経寺に届く。その文面から満男が生まれたことを寅が知っていることが分かる。

 
『拝啓、坪内冬子様、久しきご無沙汰をお許しくださいまし。故郷柴又を出しより
 1年余り、思えば月日の経つのは早いもの。風の便りに妹さくら出産の知らせを
 聞き、兄として喜びこれに優るもの無く、愚かしき妹なれど私のただ一人の肉親
 なれば今後ともお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。なお、私こと思い
 起こせば恥ずかしきことの数々、今はただ後悔と反省の日々を弟登と共に過ご
 しておりますればお嬢様には他事ながらお忘れくださるようひれ伏してお願い申し
 上げます。』         


                     




今回のマドンナは
坪内冬子さん。
第2作のマドンナは坪内夏子さん。
いくらなんでも姉妹じゃないんだから
もう少しマドンナのネーミングに気を使えばいいのに(^^;)
これも、これ1作で終ろうとしていたことによる不具合とでも
いうものかもしれない。

この手の不具合がここ数作はいたるところで見受けられる。
でもそれを探すのも
それはそれで楽しい!!(^^;)ゝ



   
最後は「天橋立」で啖呵売をする寅と登。

   
『四角四面は豆腐屋の娘、色が白いが水臭いときた!
  よーし!まけちゃおう
  まかった数字が三つ!ね!七つ長野の善光寺八つ谷中の奥寺で
  竹の柱に萱の屋根
  手鍋下げてもわしゃいとやせぬ。信州信濃の新そばよりも、わたしゃ
  あんたのそばがいい!
  あなた百までわたしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで、と、きやがった!!』




                              



   
監   督 :山田洋次
  脚   本 :山田洋次、森崎東
  撮   影 :高羽哲夫
  音   楽 :山本直純

  出   演 :車寅次郎/渥美清
         車(諏訪)さくら/倍賞千恵子
         車竜造/森川信
         車つね/三崎千恵子
         諏訪博/前田吟
         タコ社長(桂梅太郎)/太宰久雄
         源吉/佐藤蛾次郎
         川又登/津坂匡章(後に秋野太作に芸名変更)
         御前様/笠智衆
        
         諏訪一郎/志村喬
         諏訪郁/大塚君代
         たこ社長の妻(小春)/水木涼子
         鎌倉道男(さくらの見合い相手)/広川太一郎
        
         結婚式の司会者/関敬六
         川甚のホステス/村上記代
        
         香具師/北竜介、川島照満

         坪内冬子/光本幸子


         観客動員数 54万3000人



  
 第1作「男はつらいよ」終了


   第2作(続.男はつらいよ)はまた数日後に更新します。
 
    このページの制作は全て吉川孝昭によるものです。

         


04年10月16日サーバーが変わりました。
新URLは
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今後はhttp://www.yoshikawatakaaki.com/lang-jap/otokono-to.htmからアクセスしてください。よろしくお願いいたします。

お手数ですが http://yoshikawa.balibagus.com/lang-jap/otokono-to.htmをお気に入りに入れている方は再度
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http://yoshikawa.balibagus.com/lang-jap/otokono-to.htmは、数週間以内に後完全に閉鎖され、アクセスできなくなります。


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